百姓日記


一粒万倍

 ここら辺のお祭り(豊穣祭)では『一粒万倍』と言う文句がでてきます。これは『一粒のお米が一万倍にもなるように』と豊作を願った言葉になります。勿論、一粒のお米が一万倍になる事はありません。

実際は何倍くらいだろうか?とザッと計算してみました。

一反の田んぼに使う稲苗はだいたい育苗箱で18箱くらい。ひと箱約100gの種籾を使うので1.8㎏。それで収穫量が6~7俵。6俵として計算すると玄米で360㎏。籾は重量で玄米の1.2倍くらいになるので432㎏の籾になります。これを1.8㎏で割るとだいたい240倍です。

さすがに万倍にはなりませんが結構な増え方です。ちなみに一万倍になるなら一反の収穫量は籾で18t! 世界の食糧難は解決します。

 今日は来年から新規作付けする予定の乾豆の種取りをしました。

これまで自家採種をしてずっと育てていた大豆(青大豆)と黒豆(丹波黒)は、評判が良かったです。ただ晩生で収穫時期が遅いのです。霜がガンガン降りるようになってからの収穫。そこを改善する為に、収穫時期のやや早い大豆(秘伝)と黒豆(がんくい豆)に作付更新しようかな。と思いまして

春に買った小袋分の種豆。今日それぞれ1.5㎏~2㎏くらいの種豆が採れました。一粒万倍とはいきませんが一粒80倍くらいにはなったでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

新米!

 朝イチは晴れ間も見えていましたが曇天。午後からはパラパラと小雨も降る天気。今日は晴予報だったのですけどね。一枚残っているコシヒカリの脱穀を済ませたかったのですが延期です。

 

夕御飯。待に待った『新米!』

あきたこまちです♡

オカズは秋刀魚大根おろしとかぼちゃの煮付け、里芋親芋とブロッコリーを蒸したモノ。

『新米うま!』

ビールを飲む事も忘れて、新米を頬張る。

香り、艶、甘み

『これぞ新米です!』

稲作農家をしていて一番嬉しい季節。『これで一年は生きのびられる。』

主食を育てるって、そーゆー事です。

今週中には、お客さんの元へ届けます。

お疲れさまでした。

 最低気温が5℃を下回るようになってきて路地の夏野菜がとうとう終わりました。例年よりも頑張ってくれました。お疲れさま。ありがとう。

支柱と横張り紐や蔓用網を撤去してから夏野菜の残骸をハンマーナイフで砕きました。その残渣の上に籾摺りで出た籾殻と米糠、それから廃菌床を重ね置いて冬の間 雪の下で腐熟させます。

来春 雪解けと共に畑に軽く鋤き込んで、来年の野菜の肥料とします。

夏野菜さん、本当におつかれさまでした。

スーパーではありません。

 正確な数字はちょっとわからないですけれど りんもく舎では年間50品目120種類くらいの野菜を育てています。たくさんの種類を作付けするのは、効率の面では非常に悪いです。なのになぜ これだけ多くの野菜を栽培するのかと言うと、野菜セットの顔ぶれを増やしたいから&単純にぼくがいろいろ育ててみたいからです。ただね。やっぱりちょっと多すぎます。来年からは、もうすこし絞って作付けをしていこうと思っています。

慣行栽培農家さんなんかは効率よく数種類の野菜を大量に作付けしていて、それはそれで飽きっぽいぼくには無理そうです。

 

 就農当初は顧客数がじりじりとしか増えなくてたいへんだったのですが、いまは需要に供給が追い付いていない感じになっています。ありがたいことです。野菜を買ってくれるお客さんにもいろんな方がおられます。時々 困ったひともいます。突然 連絡をしてきて明日下さい。とか、全然時期の違う野菜を求められたりとか…冬にきゅうりは採れませんし、夏に白菜はありません。

スーパーでは一年を通して色とりどりの野菜が陳列されています。だから野菜の旬がわからなくなってしまっているのですよね。これは結構 問題だと思います。地産地消と言う言葉があるように『その土地で、その時期に採れるモノ』には、その地に生きるに必要なエネルギーが含まれています。

夏が旬のナス科やウリ科の野菜には、身体を冷やす作用があります。冬が旬の根菜には身体を温める効果があります。太陽に向かう野菜、地下に向かう野菜の違いです。春の山菜には冬に溜まった毒素を排出する力があるし、秋の葉物は夏に疲れた身体を癒します。自然はちゃんと出来ています。

サラダにはきゅうりとトマト。それは人が作り出した固定観念 冬は温かい鍋物でいいじゃないですか。

りんもく舎はスーパーではありません。突然 明日に野菜は揃えられませんし、時期外れの野菜はありません。太陽と水と土が、その時 その一瞬で与えてくれるモノしか育てられません。

キャベツと白菜

 朝晩がグッと冷え込んできて黒姫山は赤や黄色のグラデーション。冬の足音はそこ迄来ています。

早生白菜の収穫が始まりました。毎度の事 巻きが少し甘めです。でも美味しいよ!

 僕の個人的な意見なのですが、有機栽培をしていて割に合わない野菜の一つにキャベツ類(カリフラワー、ブロッコリーなど)があります。白菜もおなじアブラナ科結球野菜なのですが、こちらの方がまだマシです。

ここ黒姫では両者共 春蒔き→初夏採りと夏蒔き→秋冬採り ができます。ただ、りんもく農園では白菜の春蒔きはしていません。理由は単純で夏に白菜は食べたくない!からです。

おなじアブラナ科結球野菜と言えど、栽培難易度はだいぶ違っていてキャベツの営利栽培では防虫布の使用が欠かせません。野菜の虫害や病害は土を良くする事でだいぶ軽減できるのですが、コト キャベツに限ってはなかなかそれだけでは難しいのが現状です。(ぼくの未熟さも多々あります。)

ウチの場合は病気は殆どでません。一番の障害はモンシロチョウの幼虫『青虫』君による食害です。防虫布なしで育てた場合、自家用ならまぁOKなレベル。販売にはちょっとなーと言った感じに食われてしまいます。それでも知識なく無農薬で育てた場合は芯を残してレース状に虫食いになるのが当たり前の作物ですから、まだマシなのですけどね。

ただ、販売目的では物理的防除が必要になります。

一方の白菜は、定植時期がキャベツより一月程遅く虫が減り始める時期になる為、そして、なにより青虫がキャベツほど好まない為 まったくの無防除で構いません。(注意!知識のない素人が気ままにやると穴だらけにされます。肥料で育てる意識を無くさないとダメです。)

そんな白菜とキャベツ。スーパーで買うと時期にもよりますが、白菜の方が2,3倍高いです。

なぜなのか?いつも不思議です。

もっと言えば、両者共 元々の値段が安すぎなのですよね。小松菜一束とキャベツがおんなじような値段。なぜだ?

不思議です。本当に不思議です。

ぼくが気兼ねなく値段を付けられるのならキャベツ800円/玉、白菜500円/玉 くらいにしないと作る気にはなれません。勿論、そんな値段では売れませんので自家用と定期宅配のお客さんにだけお届けをしています。(白菜は余れば出荷をしています。見つけた方はラッキー!)

でもキチンと有機栽培したキャベツと白菜は本当に美味しいですよ。薬臭くないし変な味もしません。キャベツや白菜本来の味がします。

まぁ、手間を省いて安く売られているって、そーゆー事だな。

 

りんもく舎 米のこな

 エイ出版社さんから出ている『暮らし上手 毎日美味しいお取り寄せ帖』と言うムック本に りんもく舎の米粉(米のこな) が載りました。長野在住の料理家Hikaruさんと言う方に推薦していただいたようです。

出版社よりサンプル本が送られてきたのですが、諸事情がありカメラマンが撮った写真ではなく、こちらで写した写真を使用しているのが奥さんには残念だったようです。『プロが撮ったモノが見たかったなぁ』と悔しがっています。

 

りんもく舎では米粉と玄米粉、それから玄米珈琲(ドリップ式とパック式)を委託製造してもらい販売をしています。

自然栽培のお米は生産量が少ない反面 手間は大きいです。どうしても販売単価が慣行栽培のお米よりも高くなってしまいます。(生産者の労力に対しては、かなりお得なのですけれどね。) 顧客層も顔も広くない就農当初は、一年で全量売り切る事ができず困っていました。それを解決する為に、お米を使った加工品を作ることにしました。&じぶんたちの所で食べたくて・飲みたくて

委託製造をしてもらえる会社を探し、奥さんがパッケージデザインを考え、本当に細々とした感じでのスタート。

いまは 正直お米が足りなくなってきています。その証拠に我が家は農家なのに、ここ一カ月ばかり古々米を食べています! 米粉・玄米粉も品切れ状態が続いています。(今年のお米がもうすぐ収穫なので、すぐに委託製造をお願いする予定)

ありがたいことです。

加工品を作って思ったのは、製品が勝手にりんもく舎の宣伝をしてくれるって事です。カフェで玄米珈琲を使ってくれるようになったり、その縁で玄米粉をお菓子にしてくれたり、加工品を買った方が野菜の注文をしてくれるようになったり、お使い物としていただけたり。生鮮野菜に比べて、じっくりゆっくり使えパッケージに販売元の情報が載っているからですかね。

これからも真面目に心を込めて作り続けていきたいなと思っています。

『彼らはりんもく舎の営業マン』ですからね。

モノの値段2

適正な価格とはなんなのでしょう?

需要と供給のバランス≒適正価格 資本主義のお手本の答えを出すと、こんな公式になると思います。

では、うちのお米の適正価格を考えると

慣行(農薬や化成肥料を使う一般的な)栽培に比べて手間は30倍くらいかかります。(慣行栽培をした事がないので感覚的な比較になりますけれど…)ひょとしたらもっとかもしれません。で、肥料を使わない分 収穫量は半分〜2/3くらいになります。半分と仮定して、手間30倍とかけると60倍の値段でなくては割に合わないハズとなります。

60倍!スゲーな!いいなぁ!

勿論、そんな値段ではお米は売れません。実情はスーパーで買う安いお米の倍くらい。良いお米+αぐらいの単価に設定しています。そこに送料がプラスされるので、お客様にとってはお安いお米ではありません。(生産者にとってもウハウハ高いお米ではありません。)

60倍にしなければ割に合わないはずなのに2倍の単価でもやっていけるのは直接販売が基本である事、それと設備費に資本投下がない。に限ります。

 

慣行栽培の専業稲作農家になるには、初期設備費で最低1500万円くらいはかかると言われています。それで15町歩(一反の150倍)の作付けをして、やっとなんとか普通に生活できる利益レベルになります。

一方 ウチの場合は、初期投資が畑作兼用トラクターの購入費を除けば30万円くらいしかかかっていません。(中古の田植え機、中古のバインダー、半分貰い物のはざかけ脚と棒、貰い物のハーベスター、乾燥機不使用、中古の籾摺り機と選別機)プラス自然栽培なので肥料代なし、農薬代なし、自家採種しているので種子代なし と生産経費も全然かかっていません。(かけていません。)作付面積は慣行の方の1/30の5反だけ。(これが畑作兼業でできる人力除草稲作の限界です。)

 

かけるのは愛情と手間と観察力だけです。

 

面積の少なさ、収穫量の少なさを 初期投資の少なさと生産経費の少なさで補って、ちょっとだけいい値段で直接お客さまに売る。

ねっ、なんか60倍にまでしなくても大丈夫そうでしょ。

 

 大きなお金を得る為に、大きな投資をする。動くお金が大きいからお金持ち気分は味わえるかもですけれど、実質の実入りはそんなにバカみたいには変わらないのじゃないのかなぁ?と、僕は思っています。一般社会もおなじようなものじゃないですかね?お金を稼ぐためにお金を使う。出たり入ったりグルグルしすぎて儲かってるのか?損してるのか?割に合うのか?合わないのか?みんな判らなくなっていない?(未来への負債までを考えたら、きっと割に合ってない。)

それに肥料や農薬に頼らない自然栽培ならば肥料や農薬の値段が上がろうが、鎖国しようが、戦争になろうが、余り関係なく生産を続けていく事ができます。

なんにせよ。大儲けしたい訳じゃない。家族がちゃんとしたお米を食べながらおすそ分けみたいな感じで、価値と価格と食味のバランスがとれたお米を売れれば良いな。そして、細く長く生活と再生産が継続できたらいいなぁ!と、百姓鈴木は考えております。

 

自然から根こそぎ奪う事さえしなければ『太陽と水と土は、ぼくらをずっと養ってくれます。』 奪うから、失うのです。

 

モノの値段

 朝の気温3℃!さむっ!

弱り始めてからジリジリと頑張っていてくれたナスがココのところの寒さで流石に終わりました。ご苦労さまでした!ハウス栽培のトマトもぎりぎりの低空飛行で頑張ってくれてはいますけど、いつまで持つことやら

午前中はお米の検査員のお仕事をして、午後から稲藁の裁断をしていました。切った藁は来年の肥料になるので、できるだけ均一に田んぼを覆うように撒いていきます。結構、面倒です。

陽が傾き始めてから明日発送&宅配分の野菜の収穫。早生の白菜が結球し始めています。大根もずいぶんと太くなりました。今年の大根は、これまでの百姓鈴木の農業人生の中でいちばん肌がキレイです。根菜類の肌のキレイさは味にもとてもよくでます。

肌が汚い=病虫害。なので、ストレスがかからなかった分だけ、素直な野菜本来の味になっています。うれしいな。

 

野菜宅配のセットは基本の大小サイズがあってイレギュラー的に顧客の要望に応えたセットを作ったりします。で、内容は単品づつの単価をザックリと付けて、サイズに合った合計金額分にします。

この値段(単価)付けがむずかしい。就農当初は自身のなさもありめちゃ安く設定していたのですが、それでは生活が成り立ちません。スーパーや生協の値段を比べながら適正な価格をつけていきます。

それでも『こりゃ、安いなぁ』と思う時もあります。手間暇を考えるとホントに割に合わないな。と…大儲けしたい訳ではなく、真っ当に働いて、野菜を売って、そして生活と再生産ができる。そんな値段をつけていくべきなのですよね。

それがなかなかやっぱりむずかしいです。

芋掘り

 今朝の体温38.2℃。

結構な熱なのですが、百姓鈴木の平熱が元々37℃なので微熱といったところです。が、なんか調子悪いです。基礎体温が高いと風邪をひきにくいと言われているのですが確かにココ10年ばかりはほぼ風邪をひいたことがありませんでした。ところが、春に親知らずを抜いてからやたらと風邪をひいています。

鍼灸師の奥さん曰く『歯を抜く事は身体に相当な負担がかかるからね。』との事。若くもないので、そろそろ身体のケアもしないとダメですね。百姓は身体が資本ですから。

 

 そんな低空飛行な体調でしたが今日はさつまいもを掘りました。少し前からそろそろだな、って思っていたのですがなかなか他の仕事で手が回らず今日になりました。週明けの最低気温が五度らしいので寒害にやられる前に頑張りました。

収穫量はそこそこ。例年多い鼠による食害が少なくて良かったです。

2週間くらい追熟させてからお客さんの元へ届けます。

点と線

 先日 隣町にある古民家カフェへ ドキュメント映画を観に行ってきました。映画はインドで種子バンクをされている方を中心にしたお話で、内容は普段じぶんが畑で考えている事の追加確認のようなかんじでした。

『生命の根本である種子を独占したい企業の危険性』と『生命の多様性が如何に大切であるか!』と言った事が主題でした。

映画もおもしろかったのですが、それよりも映画を観に来られた方達との交流がよかったです。こんな狭い範囲だけでもじぶんが知り合えていなかっただけでたくさんの(家庭、専業問わず)有機、自然栽培農家が居られることに可能性を強く感じました。

おもしろいひとは実はあちらこちらにたくさんいて、この点と点をうまく線に繋げる事ができたなら、なにかトンデモナイ事ができるのではないだろうか?と改めて感じました。

 

 畑では少しづつ冬への準備を始めています。ハンマーナイフで草花を砕いた畑は、おおよそ畑には見えない牧草地か草原のようになっています。多様性のある土を育土していきたいものです。

 

 

もち米籾摺り

 専業農家に倉庫は必須です。資材に備品、機械など置き場はどれだけあっても足りません。ココいらの昔からあるお宅は兼業農家さんでも家よりも大きい倉庫があるのが当たり前です。

しかし、零細新規農家の我が家にはマトモな倉庫がありません。車庫を無理やり改造して倉庫代わりにしています。昨年までは荷造りする場所もなく母屋の一部屋で生活用品に囲まれながら酷く効率の悪い出荷作業をしていました。

昨年、小さいながらも家に隣接した4坪くらいの作業小屋を自力で建てて、今はそこで荷造りをしています。

今日は先日脱穀したもち米の籾摺りをしました。

これがまたえらく大変な作業!小屋の荷物を全部一度外にだして、ダンボールや包装資材に埋もれていた籾摺り機を引っ張り出してコンプレッサーで隅々まで掃除。

これだけで午前中が潰れました。

午後から籾摺り(籾と玄米に分ける事)をしながら選別機(玄米のなかにあるクズ米を選り分ける機械)を操作し、米袋に定量詰めて封を縛り、併せて排出籾の手入れ。

一分の隙もなく立ち回り3時間強くらいで終了!

小屋と機械を掃除してから、外に出した荷物をきれいに戻す。あー、手間だ!その甲斐もあり小屋はきれいになりましたが…

もち米は330kgくらい。反収穫量は6.5俵くらいでした。悪くない。あとはコレをきちんと売るだけです。

収穫タイミング

 朝の荷造り梱包と発送、ペンションへの配達を済ませてから長野市のスーパー内の直売所へ野菜を届ける。家に帰ってきたのが10時前。ご飯を食べながらスマホにて天気予報を確認。どうも午後から雨が降るようだ。少し悩んでから午前中のウチに明日発注分の野菜を収穫する事にしました。

野菜にはそれぞれ収穫に適した時間帯があります。特にわかり易いのはとうもろこしや枝豆。これらは夜の間に養分を糖にして溜めるので、朝一番の収穫が美味しいです。一方、トマトなどは日中に水分が蒸発した方が味が濃縮するので夕方採りが好ましいです。

一番ダメなのは太陽の照りつける真っ昼間の収穫。野菜自体が萎びて美味しさ以前に見た目が全然ダメです。りんもく舎では、この時期は殆どの野菜を夕方 陽が傾いてから収穫しています。翌朝の出荷になるので、できるだけ鮮度の良い状態でお届けしたいからです。

ただ、これは通常の天気の日のお話。雨が降るのが確実な日はトットと収穫をしてしまいます。理由は、水滴のついた野菜の後処理がめちゃたいへんだからです。コンテナに入れて扇風機を当てて、なんとか少しでも乾かそうとしますが、葉っぱの隙間に入った水はなかなかなくなりません。

そのまま袋詰をしてしまうと結露で見た目が悪くなる上、鮮度低下も早くなります。

ホント、農業はタイミングの仕事だなぁと思います。

 

羊の群れ

 その昔 “馬を駆って旅をしよう”と思いモンゴルの遊牧民のゲルに二週間くらいお世話になった事があります。(“現地の人と仲良くなって馬を手に入れよう”作戦の一環でした。結局 その年は干ばつが酷く、馬に食べさせる草がないよ。と言われて馬での旅は諦めました。)

昼間は暇だったので(まあ、一日中なんですけど…)よく遊牧民の子供たちと一緒にひつじの放牧にでかけました。数百頭はいるひつじのなかに一頭だけオスのヤギが混じっていたので『なんで一匹だけヤギがいるの?』とアイガ=8歳女の子に聞くと『ひつじを操り易いから』みたいな返答。(いや、モンゴル語全然できてないのでたぶんなんですけれどね。でも、言葉は通じなくても その時はたいていわかりあってた気がします。旅の底力です。)

 

 ひつじという家畜は主体性がない動物で、群れの中にリーダー的な存在もいないらしいです。だから群れは意思も意思決定力も持たず、まとまってあちへふらふらこっちへふらふら、ただ前の奴のお尻についていくだけなんです。たとえ、おおかみに襲われてもどうしてよいかわからずオロオロしながら食べられちゃうらしいです。

足元に餌(草)さえあればそれで幸せ。なにも考えない。ただ前のお尻について行くだけ。群れがどこに向かっているかも考えない。ついていくだけ。

一方 ヤギ(特にオスのリーダー)は気が強く、独立心も強い。だから、ひつじの群れに一頭のヤギを入れて彼をリーダーにして、群れ全体を制御するらしいです。ひつじはヤギのお尻について行くだけだからヤギさえ制御しておけば良いと言う事ですね。

 

この話を聞いた時 だからキリスト教では『迷える子羊』って言うのか。と、合点がいきました。

 

近頃 日本人はひつじなんだな と思うようになりました。餌さえ食べていられたら幸せ。なにも考えない。前の人のお尻について行けばいいだけ。それで安心。群れがどこに向かっているのかも知らない。群れからはぐれさえしなければ大丈夫。リーダーが誰かも知らないしなにも考えない。

じぶんの頭で考える事を放棄してしまった家畜みたいな民族。

 

キリスト教ではヤギは悪魔の化身です。

家畜を先導するヤギなど居てもらっては困るのでしょう。

なにも考えないひつじでいてくれないと(誰かが)こまるのでしょうね。

もち米脱穀

 午後から天気が崩れる予報だったので朝露がなくなってからもち米の脱穀をしました。本当はもう少し天日に干して乾かしたかったのですが今後の天気な読みにくく、とりあえずもち米だけは早めに安全策をとりました。

たいへんで人手が要る稲刈りに比べて、脱穀は一人作業でもそんなに苦にはなりません。午前中一杯かけて8畆分の脱穀を済ませました。

反収は大体6.5〜7俵くらい。

ここら辺の慣行栽培の反収が7〜8俵くらいなので肥料をまったく使っていない自然栽培にしてはまずまずの収穫量でした。

収穫量と農薬の使用には相互関係があって、安易に収穫量を増やそうとすれば農薬が必要になってきます。(ここら辺の理屈は農家さんでも理解されていない方が多いです。農薬を使う事が前提の農業をしているので考えなくてもいいのですね。たぶん。)

簡単に言えば 農産物は、地力と太陽光の合作品です。

だから、その土地から得られる根本の生産量は大体決まっています。

でも、人は欲深な生き物なので『もっとたくさん!』と肥料を与えては、野菜やお米の増収をはかります。野菜やお米に無理をさせて増産すれば、根っこと身体のバランスは崩れてしまいます。必然 病気や虫に弱くなります。それを抑える為に農薬が必要になってしまいます。

天から与えられた分以上を欲しがらない。そうするだけで農薬の使用はずいぶんと抑える事が出来るはずなのです。

 

 でもね。ぼくだって出来れば収穫量は増やしたいです。でも、そこで安直に肥料を使う事はしません。その代わりに土の力(地力)を高める事に注力します。土壌の微生物を増やし活性化させる。有機物還元力を伸ばす。二年稲作したら一年は大豆を育てて、乾土効果を狙ったり好気性細菌を増やしたりする。また、自家採取をして、ウチの田んぼや畑に合ったお米や野菜を作ったりもします。(途中)

そして、一番大事な事は『そんなに欲しがらない。』に限ります。ぼちぼち採れたらええねん。そいで、この先もぼちぼち採り続けられたらええねん。(自然栽培は循環する事が目的なのです。)

そんな気持ちで農家をやっています。

そうすると、やっぱり儲かりはしませんな。

 

稲刈り終了!

 9月23日から始めていた稲刈りが今日やっと終了しました!疲れた。そして頑張った俺!

我が家では稲は全量ハザかけにしています。『ハザかけ』と言うのは刈った稲を天日で干して自然乾燥させる昔ながらのやり方になります。

いまは自家用に小規模で稲作されている農家以外は殆どがコンバインで収穫して乾燥機で乾燥させています。理由は単純で『その方が遥かに楽』だからです。

一反(30m☓30m)の田んぼをコンバインで収穫すればだいたい1〜2時間(機械のサイズによります。)で籾の収穫から藁の裁断まで一発で終わります。収穫した籾は乾燥機に入れて強制的に乾かします。

一方、我が家では1条刈のバインダー(稲を刈って束ねてくれる機械)で丸一日かけて刈り。稲束は一束づつ集めてハザかけ棒に掛けて天日で2〜3週間干します。

それをハーベスター(稲穂から籾を取りだす機械)にかけて(半日作業)最後に藁カッター(藁を細かくカットする機械)で裁断して終了。

単純に労力だけを考えると30倍くらいの手間がかかります。

ならば、どうしてコンバインを導入しないのかと言うと。これまた単純で『そんな金ねぇよ💢』になります。そこそこのサイズのコンバインなら新車で数百万!&乾燥するための施設が要ります。

そんなお金も土地も零細農家のウチにはありません!それと、これは負け惜しみも混じってるのですけれど『自然と共生したくて農家しているのに投資を増やして利益を上げる』って考え方がぼくには馴染まないのですよね。

投資が増えれば元を取るために作付面積を増やさなきゃいけない。そんな単純なものじゃないのかもしれないけれど、面積を増やして薄利多売に走れば『心が置き去りになる』のではないかな?って、ぼくは思います。(負け惜しみですけど…)

だから、我が家は人力除草できる面積。ハザかけでやれる分だけでいいんですよ。

それに天日で干したお米はちゃんと太陽の香りがします!それは機械乾燥にはない自然の匂いです。

 

カメムシと大雪

 台風が日本海を北上し南の暖かい空気を引き連れてきて今日は暑い一日でした。秋冬野菜はここ数日の好天に恵まれてググっと大きくなってきました。これで遅れが取り戻せるといいのですが…

畑に定植した白菜の周りには柔らかそうな秋の草が生い茂っています。秋冬の雑草は余り背丈がおおきくならず野菜の生育を阻害しません。むしろ虫や菌の住処として心地よい空間を作ってくれています。雑草の種類は畑の肥沃度や環境の良さを測る目安にもなります。やわらかい草は良い状態の土に生え、かたそうな草はあまり良くない状態の土で繁茂します。

何か所かあるりんもく畑のなかでも自然栽培の年月が長い場所ほど良い草が生い茂っているので、ぼくの目指している方向がそんなには間違えていないのかな?と安心する材料になっています。(いや、全然未熟者なんですけどね。)

農業は打ちのめされる事ばかりなので悪い面は見て見ぬふりをして、良く出来た部分に心癒される事が必要です。じゃなきゃ心が折れてしまいます。

 

この秋は家の周囲(室内にも)にやたらとハチとカメムシがいます!いや、ちょっと引くレベルの多さです。カメムシの多い年は豪雪と昔から言われているので、今冬は大雪になるのでしょうか?

まあ、なんにせよ極端な気候の冬になる予感はあります。

土の匂い

 りんもく舎の畑は雑草がたくさん生えています。と、言うか雑草のなかで野菜が育っています。草取りが面倒だからとかそう言う理由ではなくて、僕の理想とする畑の究極が野原だからです。

野菜のこぼれ種が自然発芽してモサモサと茂り、雑草が表土を覆いつくしていて初めてウチの畑を見た方にはどれが育てている野菜だかわからないとよく言われます。変な畑。

でもね。ぼくの方からすると雑草一本生えていなくて、整然と野菜だけが並ぶ畑の方が奇妙に不自然に見えます。

その土地に住む生命の総量と種類の多さが良い畑の証だとぼくは考えています。雑草は虫や菌の住処になり、深く張った根っこは土を耕し、枝葉や根は朽ちて堆肥になります。

肥料は殆ど与えていないので野菜の初期生育はとても遅いです。その代わり栄養を求めて深く張った根っこは病気や虫に対して強くなり、他の畑が終わってしまった後も細く長く収穫を続ける事ができます。

敷草の下は少し湿り気があり団粒状が発達してふかふかとしています。土を掬って鼻に近づけると少しツンとしたような良い土の匂いがします。

ぼくの畑で育つ野菜は結構しあわせなんじゃないかなぁ?と、しあわせな頭で僕は考えています。

今年の夏は暑かったから南方系野菜の里芋も大きく育っています。

 

自然の力、種の力

 天気の合間を縫って稲刈りを続けています。あと一日半くらいでしょうか?疲れますがヤレバ進みます。

稲刈りと同時進行で野菜の出荷も続いています。夏野菜がだいぶヘバッてきて、秋冬野菜が足踏みしていて収穫量は微妙です。注文に応えきれるかハラハラドキドキの毎日です。去年は秋冬野菜が採れ過ぎてバタバタアタフタの日々だったので本当に農業はうまくいきませんね。(私の腕が未熟なせいでもありますが…)

畑のあちこちで野菜のこぼれ種が自然発芽しています。淡い色合いで優しい立ち姿。本当にキレイだなぁと思います。人の作為のない自然発芽特有の凛々しさがあります。

どんなに足掻いても農家は自然には勝てませんね。

見開きは大根とエンドウの自然発芽

(ズッキーニ)

(寒焼けしたきゅうり)

(もっさりトマト)

ねっ。キレイでしょ。

3/5

 朝から良い天気!出荷と配達を済ませてから田んぼへ下見。昨日 排水作業をしたものの、まだまだ水が残った状態。稲刈りには厳しい状況です。が、今後の天候への不安と早く稲刈りを済ませてしまいたい気持ちから無理くり稲刈りをする事にしました。

義父母も手伝いに来てくれて秋晴れの空の下 せっせと稲刈り。泥濘む田に苦労させられましたが、なんとか終了!本当、足場が悪いだけで5倍は疲れます。それに折角育てた稲穂が泥まみれになるのが悲しい。

まぁ、こればっかりは自然相手の事ですからね。なんとか稲刈り3/5終了しました。あと一枚。明日どれくらいできるかなぁ。

 

なにを食べてる?

 台風一過で朝から久々に青空がのぞいています。寝床に入る(8時過ぎ)まで雨風共になく『本当に台風来るのか?』と思っていましたが、朝起きると既に過ぎ去った後でした。

やりかけになっている稲刈りの続きをしたかったのですが水田には水がしっかりと溜まっていて今日は無理そう。明日はどうかな?取り敢えず細々とした作業の一日でした。

 

三才になる上の息子は近頃『恐竜』が大好き!あれ、なんで子供は恐竜好きなんですかね?周りの同年代の男の子も皆恐竜大好き。僕もチビスケの頃は好きだったんですかね?記憶にありませんが…

で、近頃僕にしてくる質問は『この子は、なに食べるの?』です。つまり、肉食か草食かがとても気になるらしいです。肉食と聞くと少し怖い顔をして『人食べる?』と聞いてきます。

『狐は肉食だよ。』『ひと食べる?』『ペンギンも肉食だよ。』『ひと食べる?』こんな感じ。

で、なんで『草じゃなくて肉を食べるの?』と

僕ら夫婦は子供の質問には極力キチンと応えたいと考えています。でも、子供が理解できる語彙のなかで説明するのはとても難しい。(どこの親もおなじ経験をされていると思います。)

『草を食べるよりも肉を食べる方が手っ取り早くたくさんの栄養を得られるからだよ。』

息子。『?』な顔。

『ライオンは強いの?』

『そーだね。ライオンとシマウマが喧嘩したらライオンの方が強いよ。でもね。お父ちゃん昔ライオンの居る国に行ったんだ。そこではライオンの1000倍くらいのシマウマが居たんだよ。』『シマウマを食べちゃうライオンはシマウマよりも強いけれど、ライオンの1000倍もいるシマウマの方がライオンよりも繁栄してるよね。』『そう考えたらシマウマの方がライオンよりも強いのかもね。』

 

畑や田んぼには野菜やお米の生育を邪魔する害虫がたくさんいます。じゃあ、その害虫をすべて駆除したとしたら。その分のナニカが歪んでしまうと僕は思っています。きっと本当の自然は食ったり食われたり、邪魔したり助け合ったり、複雑に密接に、絡み合って成り立っています。強いとか弱いとかはある一側面であって、本当はそんなものはないのではないかなぁと百姓鈴木は考えています。

息子が大きくなった時、自分の目でライオンとシマウマを観に行って自分の頭と感覚で理解できるようになってくれたらなぁ。と親バカは考えております。