倒れたお米

 例年よりも少し早い感じで周辺の農家さんが稲刈りを始めました。コンバイン(稲刈りと脱穀と藁の裁断を一時に行える機械)の動き回る音があちらこちらから聞こえてきます。我が家も来週には餅米を刈りたいと思っています。

車で走っていると所々の田んぼで倒伏した稲が目に入ります。倒れた稲を見るとぼくは少し悲しい気持ちになります。

どんな生物でも一緒なのですけれど、生物の生きる最大の目的は子孫を遺す事にあります。(人は違うって意見もあるでしょうが…)単細胞生物だろうが多細胞生物だろうが、魚も虫も獣も草木も、自分の遺伝子を遺す事が生まれてきた最大の意味なのです。それは稲だって野菜だっておなじです。

稲にとって、一番守らなきゃいけない次世代への種 稲穂が倒れてしまう。これって普通の事じゃないですよね。倒れて水に浸けば腐ってしまうし、獣や虫にも食べられやすくなってしまいます。

じゃあ、なんで稲の倒伏した田んぼがあるのか?

人は欲深い生き物です。だから、同じ面積からちょっとでもたくさんのお米を収穫したいと考えます。それでたくさんの肥料を撒きます。たくさんの肥料分を吸った稲は、希望通りグングンと大きくなります。栄養がたっぷりとあるから根っこを伸ばさないままで、グングン大きくなります。

たっぷりと実った重い稲穂。でも、弱い根っこはその重みに堪えきれずに倒れてしまいます。一番大切な稲穂を危険に晒して

倒伏する田んぼは、だいたい毎年おんなじ田んぼ。その田んぼの作り手農家の稲に対する気持ちが透けて見えます。稲は命ではなくお金なんですよね。

そんな事を考えて、ぼくはいつも少し寂しくなってしまいます。

えっ?うちの田んぼは?って

『あんまりたくさんの稲穂はついてません。だから、絶対に、確実に、ほぼ100%でうちのお米は倒伏しません。倒れちゃうくらいお米が採りたいなぁ』とは、思わないですね。ぼちぼちでええんですよ。