シャインマスカット

 就農するまえの数年 農事組合法人にて農産物の販売営業をしていました。長野県北信地方と場所柄から野菜よりも果物の取り扱いが多かったです。そのときに学んだことは、産地によって果物の仕立て方が違う、という事でした。

昔から果樹栽培が盛んだったところでは風土も合っているからでしょう、おいしくて高品質の果物が収穫されます。だから単価も高い。一方の後発産地では、元来果樹栽培に向いていない地域なので、あまりおいしくない。だから単価も安目です。そのため後発産地では量を作ることで利益をだす仕組みになっていました。

ぼくの見聞きした限りだと先進と後発を比べるとおなじ面積で三倍くらいの違いがありました。おなじ面積でたくさん作れば果物の味は更に落ちます。が、質よりも量なのです。

加えて、ベテラン農家(高齢)さんと若手農家さんでは、若手の方がたくさん作る傾向がありました。ベテランさんの方がじぶんの作る農産物にプライドを持っている事が多かったです。

 先日義父母が孫にとシャインマスカットを買ってきました。高かったらしいです。知り合いのぶとう農家さんも『シャインマスカットが高く売れて儲かる』という話をしていました。

高かったシャインマスカットを一瞥して『おいしくなさそうだなぁ』と思いました。粒のサイズもバラバラでだらしなくまとまりがない。シャインマスカット特有のマッドな深い緑白色ではなくて、やや黄色がかった薄い緑。食べてみると案の定、おいしくない。

日本では、こう言う事が多すぎるとおもいます。

おいしい品種を手間隙かけて更においしく作る。徐々に知名度と評判が上がり卸価格も上がる。高値で売れるものだから後発の烏合の農家がバンバン大量に粗悪品を作り、流通させる。で、高いのに奮発してシャインマスカットを買ったお客さんが値段に見合わない味に落胆して、もう買わない。→大量に育てられたシャインマスカットは行き場を失い安価で売られる。→つられて高品質のシャインマスカットも安くなる。

そんな事をずっと繰り返しているのが農家と農協と販売店なのです。今さえ良ければいい。とか先の事を考えられない。とか、日本人の特性なんですかね?もったいないなぁ。