二匹と七匹

 仕事終わりに冷えた身体を温めようと近所の温泉に家族で出かけました。二歳になった次男がやっと父ちゃんと兄ちゃんと一緒にお風呂に入れるようになったので、普段一時も休まることのない奥さんにひとりでゆっくりお湯に浸かってもらうことにしました。

服を脱いで湯船に浸かるまではいい。ひっくり返らないようにだけ注意して、お兄ちゃんと遊ばせる。周りの人に迷惑がかからない程度に、はしゃぐのは許す。と言うか、そうでもしないとこちらが無理。問題は出るときです。

弟を拭いていると濡れた兄が勝手に脱衣場へ。交代でお兄ちゃんを拭いていると脱衣場で弟が大暴れ。羽交い締めにして服を着せ、離すと床で転げ回る。兄も弟も…疲れる。飼い犬の方が、余程言うことを聞きます。

帰り道、山裾の森のなかを走る町道を走っていると道路の真ん中にでっかい猪が居ました。まだ、縞模様全開のうり坊を6、7匹連れているお母さんです。丸々と太った母ちゃんは、貫禄たっぷりで80㎏くらいはありそうです。(僕は4年間猟師をしていたので、目測でだいたいの重さがわかります。)

この時期に、あのサイズのうり坊を連れているとは…たぶん、出産時期が遅かったのでしょう。これから寒くなるから子供たちが冬を越せるのか心配になります。

まぁ、でも、あの貫禄たっぷりのお母さんのことです。ちび達も恐らく一匹の欠員も出さずにここまで育てているのですから、きっと大丈夫でしょう。二匹のチビにあたふたとしている僕よりも彼女の方が立派にみえました。

畑や田んぼを荒らす猪。『この野郎💢』と思わせられた事も多々あります。それでも、あの親子が無事に冬を越せることを祈っちゃう。人間の不思議なところです。

家のすぐ近くにリアルな野生が残っていて、それがなんだか嬉しく思えた出来事でした。