お米と苦行

 無農薬でお米を育てるのは、実はそんなにむずかしくはない。むずかしくはないけれど、楽な訳じゃない。むしろ、とてつもなくツライ。

野菜の種類にもよるけれど、有機や自然農で野菜を育てるのは結構むずかしい。コツやタイミング、土壌状態とか野菜の個性を知っていないと殆ど収穫できない時もある。デリケートなんです。その点お米はやることさえやっておけば大丈夫。

まぁ、考えてみれば当たり前で人によって出来不出来が激しすぎれば主食の地位になっていない。ある意味、誰でも育てられるから日本人はお米を食べて生きてきたのです。ただ『やることをやる』がたいへんなんです。

田んぼに入れる沢水、山水には栄養が溶け込んでいる。だから贅沢を言わなければその栄養だけでお米は育ちます。うちの場合は、8年間無肥料だけれど反収穫量はだいたい6~7俵。ここら辺の慣行栽培(肥料、農薬を使う普通の栽培)農家の平均反収が7~8俵なので、ほぼ変わりません。(農家によってはもっと取る人もいます。)

過肥料でお米の潜在能力を弱らせたり、農薬で土を弱らせなければ元来お米は強い作物なので虫や病気にも負けません。お米の栽培でただ一つ気にかけて気をつけなくてはいけないことは『雑草』です。(おそらく畑の草を必死になって抜くのは田んぼの経験から来てるのではないかな?と思います。)

田んぼを始めた当初は、田植え後の6~7月の間に5回くらい除草に入っていました。その後、荒代、代かき、除草タイミングなどの防草テクニックとコツを徐々につかんで、ここ数年は1~2回の機械除草でほぼ雑草を抑えられるようになりました。が、しかし今年は大失敗です。三枚ある田んぼのひとつにヒエがバッチリと繁茂しています。原因はいまひとつわからないけれど、天候と水温と代かきにあるのかなぁ?と思っています。

ある程度育ったヒエにはチェーン除草は効きません。除草機で条間のヒエは取れますが、株間までは除去できない。と言うことは…見て見ぬふりをするか、手で除草するしかありません。

どうする俺?

一瞬見て見ぬふりが頭によぎりましたが、とりあえずできる分だけでも手で除草に入ることにしました。

泥濘田んぼに足を突っ込み、稲まわりを一株一株 爪を立てて土をかき混ぜる。腰が痛くなってアタマを上げると対岸まではまだまだ遠い。照りつける太陽、照り返す水面、じぶんの存在を忘れる。無心になる。あぁ、この感じ懐かしいなぁ(除草を買うまでの数年間は手除草をしていました。) アタマを上げるとまだ遠い。うん。辛いな、辛い。

苦しいけれど、なんとなく嬉しくもある。まぁ、修行、荒行、苦行の類いですね。ふぅ