アフリカとアラスカと3

この話ながいな。まだ、続きます。

 自分と言う人間の総合力が試されるアラスカで僕は得難い経験を強制的にさせてもらいました。

ユーコン河はかなり大きな大河です。中流部以降は川幅数キロ、河口部に至っては数十キロのサイズがあります。平坦な土地を流れる大河らしく、ゆったりとした流れで、殆ど危ない場所はありません。ただ、道中に二ヶ所 危険なポイントがあります。そのひとつが上流にある『fivefinger』です。

『五本の指』その名が示す通り、広かった大河が、その場所だけウエストのくびれのようにキュと狭くなり、川面からは五本の巨大な岩柱が空に突きだしています。重い川の流れは岩に当たり、砕け、大波が渦巻く危険な場所です。

ただ、右岸ギリギリを進めば安全に抜けられる事を、日本を経つ前も現地に入ってからも何人かの人に忠告されていました。

 

 でも、あれはいったいなんだったんでしょう?ちゃんと意識していたはずなのに、穏やかな川の流れに思考が停止していたのか?魔が差したのか?遠くに岩柱を眺めていたら、気がついた時にはドンドン早くなる川の流れに、危険水準を越える所までカヌーは流れていました。

僕が居たのは河の中心辺り、そこから右岸までは数百メートルの距離。早くなる流速から目測しても必死でカヌーを漕げばギリギリ間に合うか、その手前の大岩が作り出す大波に呑み込まれるか?微妙な位置。9割方 右岸には間に合うはず、だけど、もし、たどり着けなかったら100%の沈没。それから、自分の居た位置からは右岸ギリギリの静水面部分が確認できなかったのです。ひょっとしたら、静水面はもっと先かもしれない。そんな不確定要素がありました。

停止していた思考を急回転で呼び起こし、状況を確認する。

僕の左手前方には二本の岩柱に挟まれた水路が、この岩の間も波は酷いけれど、他の水路よりはマシ。6、7割の確率で乗り越えられそうな感覚。

一瞬のなかで僕は判断を下しました。

『左手の岩場を抜けていこう。』と

不確定要素に賭ける方が危険だと判断したのです。

はい。次は4に続きます。