アフリカとアラスカと2

前回の続き

 アフリカからボロボロになって戻った僕は『もう、旅は終わり。これからはまっとうに生きよう』と、沖縄のサトウキビ工場で働きながら考えていました。

その頃の僕は『真面目に就職して、マトモに生活しなければ結婚も出来ないし、幸せにもなれない』と思い込まされていたんですね。10年近くヒッピーをしていたにも関わらずです❗

ホントに日本の教育は偉大です。自制を刷り込み、常識に縛られた従順な人間を産み出す教育の賜物です。常識なんぞ、ただの多数派の意見でしかないと気が付くまでは、まだ時間がかかりました。

 

 『マトモになるぞ!』と思ったものの、半端者の僕にすんなりと社会に合流する事は出来ませんでした。三年間 北や南や山で季節労働をし、時々 短期の海外旅行に行き、気がつけば29歳の初夏にカナダのユーコン河辺に立っていました。

ユーコン川はカナダ(ホワイトホース)から数千キロ先のアラスカ ベーリング海(確か?)に注ぐ大河です。アフリカで味わった『ガイドブックじゃない自分の旅』をも一度味わう為に行きました。

アラスカは人の密度が非常に薄く、その分 自然の濃度が高い大地です。町が所々に点在するカナダ側上流部はまだしも、アメリカに入って以降は、数百キロおきに人口数十人規模の村がポツリとあるレベルになります。強制的に数週間 人にまったく合わない経験はアラスカ以外では、なかなか出来ないと思います。

アフリカの旅では『忍耐力と適応力』が問われました。アラスカの旅では『人間力と総合力(経験値)』が問われる事になりました。

人に出会わない。世界には自分ひとりしかいないような感覚。悪くなかったです。寂しくないと言えば嘘になるけれど、ひとりを楽しむ時間は、悪くなかったです。

数羽のワタリカラスが僕の見て、僕の事を話し合っているのを聞きました。河辺を急ぐおじさんみたいに人間臭いヤマアラシに出会いました。自分のテリトリーに勝手に張られたテントに怒っているムースにも出会いました。熊や山猫にも出会いました。

ここは、人間の社会ではなく、動物の社会なのだ、と感じました。ここでは、僕の方が部外者なのです。だから、河を流れた数ヵ月の間に僕も動物となりました。生きる自由も死ぬ自由もある世界で、すべての時間を自分だけの為に使いました。

あっ!

書きたい話にまで、まだたどり着かない。ながくなるから、その3に続く。だね。