百姓日記


休みの後

 前日に三枚の田んぼの内、二枚の畔に電気柵を張りました。夕暮れになったので『明日、残り一枚やろう。』と思っていたら…やられました。一晩のうちに猪に入られて、稲がひっくり返えされてしまいました。

がっくし

なんだかやる気が出なくて、午後から海に釣りに行く事にしました。

丸坊主

 

 晩夏で果菜類の収穫がピークの時に1日収穫を飛ばすとどうなるか。

大変です。

いつもより早目に収穫を開始したのに、全然終わりません。軽トラに積んだ野菜は、ゾッとする量に…

結局、選別と袋詰めに日付がかわるまでかかりました。

じぶんの尻はじぶんで拭かなきゃならない自営業。帳尻はどうしたって、合うのです。

食べ物の匂い

 鍼灸師の奥さんは食べ物に対しての考えがしっかりとあります。『医食同源。食べたものが、その人の心身を作る。』からです。普段から添加物や糖分(特に白砂糖)や悪い油を使った食品は、極力避けるようにしています。

僕は、と言うと、舌は割りとしっかりしています。が、奥さんと違って、普通にジャンクフードも食べます。暑い日にはコーラを飲んだり、長野市内へ野菜の配達をした時などはマックに寄ったりもします。

それでも10年奥さんと一緒にいて、ちゃんとした手料理をずっと食べていると、食品に対する味覚の感じ方も変わってきました。要は、身体が欲しているのか?頭が欲しているのか?の差なのです。

 そんな我が家で食べている食材は、野菜はもちろん僕が育てた野菜たちです。それ以外の多くは、自然派クラブと言う『ある程度、ちゃんとした食品』を扱う生協で頼んでいます。

(ここまで前振りです。)

先日、おなかが空いたのでスーパーで牛乳とパンを買いました。で、牛乳を飲んだら、なんか鼻に抜ける匂いを感じました。『ん?なんか、この匂い 覚えがあるなぁ』と…

近頃は、自然派クラブで頼んだ牛乳しか飲んでいませんでした。(元々、牛乳は身体に良くないと言う考え方を持っていて、常飲はせず嗜好品として、時々しか飲んでいません。) その牛乳では、感じなかった久しぶりの匂いの記憶。

二口目を飲んで『あっ、卵の黄身の匂いだわ』と気がつきました。

つまり、乳牛が食べた濃縮飼料の匂い(おそらく油分)なんですね。

採卵鶏も乳牛も経済動物として飼育されています。なるべく動き回らなくさせて(カロリー使うからね。)、高濃縮の飼料を食べさせて、卵なり乳を、なるべくたくさん収奪する。経費を抑え、利益のみの追及。その経費のみに重点を置いた飼料の脂の臭いなんです。

農業の世界と一緒なんです。

僕が自分ちの野菜を食べて感じるのは、味以前に匂いなんです。臭くない。

きゅうりも人参も大根も、臭くない。言葉で説明するのは難しいけれど、おなじ系統の匂いなんだけれども、慣行栽培で育てられた人参は『人参臭い』けれど、りんもく舎の人参は『人参の香り』なんです。

それが何処から来ている匂いなのかは正確にはわからないです。けれど、たぶん 化成肥料の臭いか、農薬に対して野菜が出す抵抗臭、防御臭なのではないかな?と僕は考えています。

うまくまとめられないのですけれど、匂い(におい)と臭い(におい)はおなじ漢字だけれど、ずいぶんと印象は違います。

いい匂いのする野菜を育てたいですし、みんなに食べてもらいたいと思っています。人参嫌いの子供も人参が嫌いなのではなくて、その奥にある化成肥料や農薬が嫌いなのではないのかな?と、スズキは考えております。

(うーん。うまく、まとめられない。)

獣害

 朝三枚ある田んぼを見回っていると猪が侵入した痕跡がありました。

ここ数年この時期になると毎年田んぼに入られて、稲を転ばされます。別にお米を食べに来ている訳ではなくて、泥浴びをしに来ているのです。

倒れたお米は収穫が大変になるし、臭いや泥がついてしまいます。なので電気柵を張る事にしました。午前中一杯かけて畔草を刈り、とうもろこし畑で使っていた電気柵を移動させました。

獣害は僕の住んでいる村では、まだ猪くらいですが、暖地や平場では鹿や猿もやって来るようです。農家は対応に苦慮しています。

一昔前までは獣が里に降りてくる事はそんなに無かったと思うのですが、ここ10数年で獣害被害は日本全国で一気に広がっています。

雪が少なくなって冬に死ぬ個体が減ったから、豚と交雑して多産になったから、猟師が減ったから、植林ばかりになり山に食べ物がなくなったから、里山の手入れがされなくなったから、野良犬が居なくなったから、などなど いろいろな説が考えられています。

多様性を守りたいと有機農家になったのに、電気柵で獣を防いでいる。

なんだか、難しい問題ですね。

次男

 鍼灸師の奥さんが仕事の日は、義父母に子供を預かってもらいます。今日は義父母に用事があったので、午前中一杯は僕が子守りをする事になりました。

年中さんの長男を保育園に送り、その足で直売所に野菜を納品。それから野尻湖(ナウマンゾウで有名な)へ行きました。船着き場でコイに餌をあげ、砂浜へ移動して水辺でパチャパチャと遊びました。

近頃は畑が忙しすぎて殆どかまってあげられなかったので、尚更 次男は嬉しそうにしていました。

当たり前ですが、おなじ両親から生まれてきた兄弟だけれど、気質は結構ちがいます。お兄ちゃんの方は、割りと周りに気遣いが出来て、根本やさしい感じ。

次男の方は、本当に笑えるくらいGOING my way です。動きは急加速、急停止。転んだり、なにかにぶつかったりしても、まったく意に介しません。僕や奥さんが本気で怒っても、素知らぬ顔でこっちを向く事すらしません。

覚え始めた言葉は、まだ語彙が少ないです。でも、そんなことは彼には関係ありません。少ない語彙でじぶんの意思を気迫で相手に伝えます。気合いがあれば、なんとでもなる!の見本みたいな振る舞いです。

まだ2才になりたて、いまでこれだけ制御できない次男がどんな風に育つのか?恐ろしいような、楽しみなような なんとも言えない感じです。

人参

 朝は収穫と出荷に追われて、午前中に畑に出られるのは2、3時間くらい。昼御飯と昼寝を挟んで、午後の作業は収穫を始める前の2時間くらい。

まったく、時間が足りません。

足りない時間のなかで優先順位を決めて、緊急性の高い野良仕事から進めています。常時、追われっぱなしです。

 夕方の収穫をする前に少しだけ時間が出来たので人参畝の草取りをしました。

秋人参は7月の末頃に播種をします。人参の種は、発芽するまでは水分が必要で、しかも、発芽にかかる日数が長い特徴があります。なので発芽するまでは灌水を常時します。

土壌に湿り気があれば必然 雑草の種も発芽します。その上、人参の初期成育はめちゃくちゃ遅いのです。俗に言う『草負け』しやすい野菜です。

水を与えるから雑草が芽吹く、人参の成長は遅々として進まない。結果、草取りが欠かせません。

畑の畝の横に片ひざをついて小さな雑草の芽 更に小さい人参の芽を傷付けないように抜く。

根気が要ります。

どうなってるの?

 雨が降りません。

どうなってるの?

4月の半ばから一ヶ月半で2回しかまとまった雨が降りませんでした。野菜たちも水不足に喘いで、天水を待ち焦がれていました。

梅雨入り後、今度は7月いっぱい雨が降りっぱなしで、太陽を待ち望んでいました。

八月に入り遅い梅雨明け。『やっと晴れ間が覗いた❕』と歓喜していたら、今度は全く雨が降りません。

どうなってるの?マジで

どんなに苦心惨憺したところで農業は所詮、御天道様商売です。

農家の住みにくい国になってきました。

雨乞いの躍りでも踊りますか…

 

 

オクラ

 野菜を育てる時、いろいろ条件を変えて成育テストをします。農業を始めた当初は、パターンを多くしすぎて収穫する頃には、なにがなにやら訳がわからなくなっていました。その反省も含めて、近頃は少ない(覚えておける)パターンを試しています。

りんもく舎では、2種類のオクラを育てています。一般的な五角オクラと大きくなっても固くなりにくい丸オクラで、どちらも固定種を育てています。

今年のオクラの試験志向は『温度』に絞りました。ピニールマルチあり、なし、パオパオあり、なし です。

ビニールマルチは大きなサランラップみたいなモノで、畝を覆う事で雑草の発芽抑制、土壌水分保持、地温上昇の効果があります。

パオパオは薄い布状のシートでトンネルを作り、服を着ているような感じにして保温する効果があります。

各2畝づつ、計4畝を作付したのですが、そのうちのひとつの畝のオクラが異常に大きくなってしまいました。大きいから実がたくさん採れるかと言うと、別にそんな事はなくて、むしろ収穫量は少ないのです。

恥ずかしながら、原因が判りません。

既に頭頂部は2㍍を越えています。そのうち収穫する事もままならなくなると思います。ヒコ生えが凄すぎて小さな森のようになってしまい、余りにも鬱陶し過ぎてかなり剪定をしました。

なぜ、あの畝だけあんなに大きく育ってしまったのでしょうか?

農業は不思議に溢れております。

秋の気配

 暑い。

日中は嫌になる暑さが続いています。それでも高原の信濃町は、最高気温は30℃そこそこです。浜松の40℃越えとか、どんな感じなのでしょうか?

僕の人生経験上の最高気温は、たぶんスーダンで味わった45℃です。エジプトとの国境から首都ダルフールへ向かう汽車のなか。一面の轢砂漠を自転車くらいの速度で進みます。線路脇には骨と皮だけになったラクダの死体がゴロゴロと転がっていました。(たぶん乾燥し過ぎて腐敗せず、何年も前の死体が残っているのです。)

確か、一泊くらいの車中移動。2㍑の水を2本買って乗り込みました。窓から吹き込む風は、ただの熱風。飲み込む水は、ただのお湯。乾燥し過ぎて、汗も出ません。飲み込んだ4㍑の水は、一度としてオシッコにはなりませんでした。

『旅は若い内にしろ』

ホンマにその通りです。今あそこに行けば、たぶん倒れます。経験値のなさと無限の体力が、若者の貧乏旅行を支えます。

 

 きつい日差しの下でとうもろこし畑の畔畝の草刈りをしました。ずっと、やらなくっちゃなぁって、思っていたので草刈り後は、ちょっと気が楽になりました。今年のとうもろこしもあと残り僅か。野菜を通して、季節の移り変わりを感じる今日この頃です。

休憩場所

 高原の信濃町は、朝晩が涼しくなってきました。今朝のとうもろこし収穫時など、肌寒いくらいでした。ただ、晴れた日の日中は暑い❗春秋のようにフル稼働で野良仕事をしているとぶっ倒れてしまいます。

で、時々 休憩を挟むのですが、畑には日除けになる場所が余りありません。そんな時は、支柱ネット仕立てのつる野菜(いんげんやきゅうりなど)の下で休憩します。

木漏れ日で風が抜けて、思いの外 快適に過ごすことが出来ます。

日焼け

 前日の夕方に収穫をしている時、フト気になって南瓜の畑を見に行きました。数日前まではしっかりと茂っていた(やや弱り始めてはいましたが)南瓜の葉っぱが半分枯れ始めていました。

南瓜などのウリ科野菜は、株元の方から葉っぱが枯れ出します。株元には最初に付く南瓜があり、その上部が日焼けしていました。『こりゃあかん。』と、今日は急遽 南瓜の収穫をしています。

10年前に越してきた当時は南瓜の日焼けなど気にした事はなかったのですが、ここ数年は気をつけておかないとアッサリと日焼けしてしまいます。

収穫した南瓜はコンテナに入れて、トマト用ハウスの片隅に遮光ネットをかけてしばらく放置します。ハウス内の高温で南瓜のデンプンが糖類に転換する手助けをします。

10日くらい追熟させたらお客様の元へお届けです。

白菜

 りんもく舎のいちばん古い畑は家から徒歩一分の所にあります。家を買い引っ越してきた年から借りているので、その畑は不耕起栽培8年目になります。

最初は家庭菜園でしたから、いろいろな野菜を育てていました。5年前に専業農家になってからは、ずっと茄子をメインに作付していました。その畑で昨年、茄子の連作障害がでました。なので今年は半分はとうもろこしを、残りはいんげん豆とキャベツを育てています。

先行早採りして収穫の終わった畝のとうもろこしをハンマーナイフでバラバラに砕き、そこに秋冬作の白菜苗を定植しました。

前作のとうもろこしは肥料食いの作物です。ウチで育てている野菜のなかではいちばんたくさんの菌床堆肥を畑に入れて育てていました。菌床堆肥は施設栽培のキノコを育てる培地の残りカスを酵素発酵させたモノになります。

菌床の主原料は、オガクズとコーングリッドと米糠です。肥料の分解速度は原料に含まれる炭素と窒素の割合で決まります。(農業用語ではC/N比と言います。)木質が主原料の菌床堆肥は、非常にゆっくりと分解していきます。(すべて分解するのに5年くらいかかると言われています。)

とうもろこしの食べ残した堆肥で白菜を育てる。更にバラバラに砕いたとうもろこしは敷草同様に畝を覆い、雑草の発芽抑制と菌類の住みやすい環境を作ります。

こう言う風に如何に手間を抜きながら効率よく、作物にとってより良い環境を作れるか。有機農家の腕の見せ所です。(自画自賛)

農家は身体が資本の仕事ですが、バカでは成り立たないのですよ。ホント

とうもろこし

 朝晩は少し涼しくなってきた高原の信濃町。でも、日中はしっかりと暑いです。滝のような汗を流しながら百姓をしています。(どーでもいい話ですがスマホで百姓を変換すると最初に百姓一揆が来ます。…そうですね。そろそろおとなしい日本人も一揆起こした方がいいですね。国に殺される前に、民意を表現しましょう。)

 

 収穫時期がズレていた三発目のとうもろこしの収穫がピークに入りました。例年だとお盆の頃から増えてくるアワノメイガの食害が今年は少ないです。実は小さめですが歩留まりは悪くないです。天候の影響なのでしょうか?

とうもろこしの収穫ベストタイミングは、かなりシビアです。ピークは1、2日で、おいしく食べられる収穫タイミングも4、5日の幅しかありません。早いと甘味が乗っていないし、遅いと旨味が逃げて粒が固くなります。

どうやって収穫のベストタイミングを測るか、と言うと、果頂を握って指先の感覚で判断をします。『プリっと、パツン』がいいタイミングです。収穫は経験値がモノを言います。余談ですが、他の果菜類も収穫タイミングはいろいろです。おなじ野菜でも時期や樹勢で採り時はかわってきます。

僕の場合は、毎年毎年 そろそろかな?あと3日早いな。あー、一日遅かった。と、アタフタドタバタとしています。で、『あっ❗このタイミングねー‼️わかった👍』と気がついた頃には、とうもろこしの時期が終わります。

迷いのない、とうもろこしマスターにはやくなりたいです。

秋の音

 このまま来ないと思っていた夏は、ちゃんとやって来ました。暑い。

ずっとやりたいなぁ(やらなきゃなぁ)と思いながら、なかなか手が出せなかった休耕田で間作している乾豆(大豆、黒豆、小豆)の中耕除草をしました。短くなった雑草は、散髪した後のようにスッキリとしました。

 

 夏から秋に向かうこの時期は、野菜の収穫がたいへんになります。果菜類の実の成長は早くて、毎日の収穫がかせません。樹成りで放っておくと実が大きく成りすぎて食べられないだけでなく、樹自体を痛めてしまいます。子供(種)を作り育てるって、野菜にとっても、それだけ大変な事なのです。

秋の夜長に向かうこの時期は、日暮れが日一日と短くなっていきます。それでも日中の気温はまだまだ高いので、必然 気温の落ちた夕方にバタバタと早足で収穫を進めなくてはなりません。

暗くなってきたなぁ。と焦りながら茄子の収穫をしていると、草の影から『リリリリリ』と秋の虫の鳴き声がしました。極端な天候でこのままどうにかなってしまうのではないかと、僕らはバタバタとアタフタと日々を過ごしています。が、心配しなくてもキチンと地球は周り、季節は巡っています。

『もう、秋はすぐそこ』

ネットメロン

 有機栽培の創成期 『有機栽培で野菜など作れる訳がない。』と言われていました。事実、当時の有機野菜は虫食いや病果は当たり前だったと言われています。

先人の苦心惨憺の末、たくさんの知見が積み重なって、現在では(農家によりけりですが)かなり良い有機野菜が育てられるようになっています。

りんもく舎でも慣行栽培品と同程度かやや小さいくらい、作物によってはウチの方が胸を張れるなど、殆どの野菜を育てる事が出来ています。

でも、苦手作物がない訳ではありません。

りんもく舎だと玉ねぎとかパプリカとかネットメロンは、全然ダメです。

玉ねぎは有機栽培向きの作物と言われていて、淡路の知り合いは立派なモノを育てています。でも、スズキには超難関❗殆どの苗が冬を越す事が出来なくて、なんとか越冬してもペコロス(丸ごと食べるミニ玉ねぎ)サイズのモノしか収穫出来ません。

パプリカは、本当にまったくダメです。元々 南方系の野菜で土地柄に合っていない上、品種改良が非常に激しくなされた作物なので、病気に異常に弱いです。順調そうに見えても第一果を収穫して第二果を採る頃には、立派なパプリカの一部がブヨブヨに軟らかくなってしまいます。そんな事の繰り返しで、いまは作る事すら諦めました。(大丈夫、パプリカなくても、ひとは生きていけるから…)

ネットメロンは、ちいさくてもなんとか実を収穫する事は出来てました。でもね。甘くないのですよ。全然。

で、今年はトマトを育てているハウスのなかでシャレで作ってみる事にしました。今のところ順調です。大きくて、美味しそうです。(過去最高の出来❗)

で、ここで問題が発生しました。

『ネットメロンの採り時』って、いつ?

これ迄、マトモにできたことがないので知りません。

そこで近所に居る友人有機農家に聞きました。

『メロンの採り時っていつ?』

『プロは開花日を記入しておいて、適時に採ってますね。』

『… そんな面倒で几帳面な事が俺に出来ると思う?もっと楽で簡便な方法はないの?』

『… いや、開花日逆算じゃないっすか?』

『… 使えない奴だな。』

と、相談に乗っているのに悪態を吐かれて友人は散々です。

しかし、いつ食べたら良いのだ?

じゃがいも

 長雨の影響で早々に茎葉が枯れていたじゃがいもを掘りました。収穫量は例年の半分くらいと惨めなものです。農業は徒労が多いなぁ。それでも、あんな天気でもちゃんとご褒美を与えてくれた事に感謝です。

じゃがいも掘りをしていると指先がニュルとした触感に当たるときがあります。雨のせいなのか、ウイルスなのか、土中で芋が腐って溶けているのです。僕ら(僕と友人農家)は『マヨネーズ』と言っています。見た目も雰囲気も、正にマヨネーズみたいな感じです。

このマヨネーズ、めちゃくちゃ臭いのです。なんとも形容し難い臭いで、気持ち悪い触感と共に、気持ちを萎えさせるパワーに溢れています。一緒に芋掘りをしていた息子も『嫌や』と言って逃げていきます。

キャベツを収穫した後の茎にたまった水が腐った時(こっちはまんまう⚪この臭い)と双璧をなす畑の臭いちゃんを乗り越えて、お客様の元へお届けしています。

しかし、あの臭いの元はなんなんだ?(糸状菌=キノコの仲間の作用らしいですが…)

ボロボロになっても

 夏が来ました。暑い。

この時期は昼寝しないと持ちません。昼に帰って、シャワーを浴びて、御飯食べて、1、2時間寝ます。寝起きは、かなり悪いです。

何度も書きましたが、春からの悪天候の影響で野菜の成育がよろしくないです。それでも直売所などで見聞きする限り、他の農家さんよりはマシな状態のようです。本当に野菜が採れていないようで人によっては壊滅状態らしいです。

『悪天候に強い❗』は有機栽培のひとつの特徴かも知れません。理論的な理由としては、化成肥料&農薬のちからで育てていない為、生育初期にしっかりと深く根を張っている。だから野菜自体の持っている底力が慣行栽培品よりも強い。

それから、もひとつは僕の妄想理論ですけれど

『野菜自身が意思を持ち、環境状況と成長状態を考えて、適切なスピードで育っている。』のではないかなぁ、と思っています。慣行栽培の場合は、化成肥料の力で野菜自身の意思を無視して、無理やり育てられている。その差なのではないかな?と

まぁ、オカルト理論なんですけどね。(笑)

でも、あながち嘘っぱちでもないと僕は思っています。

なんかね。本当にうちの畑の野菜たちには、他の畑の野菜よりしっかりとした意志があるように日々感じているのです。父ちゃんがしっかりしていないから、自分で頑張らなきゃって思っているのですよ。たぶん。

まぁ、人には笑われると思いますけれど…

 

 一発目のきゅうりがだいぶ弱ってきました。時期的にはおかしくないです。葉っぱは加齢や病気でやられてボロボロになってる。それでも、なんとかかんとか実をつける。尻太り果や曲がり果が多くなって、それでも、気合いで花を咲かせ、実をつける。

僕らが食べている果菜類は『果実(種)』なのです。つまりは彼らの子孫、『子供』なのです。

なんとか、次の世代に繋げようと身体がボロボロになりながらも実をつける。文字通り、未来のために種をつけるのです。

本当に頭が下がります。

まぁ、採って喰っちゃうのですけどね。

でも、それが野菜の幸せの形のひとつなのかも知れません。

 

きれいだね

 やっぱり今年の野菜達の挙動がなんだかおかしい。たった10年程度の浅い農業経験だけれども、その経験と則してみてもヘンなんです。

いつもならまだ採れない野菜が採れ、もう盛期に突入しているはずの野菜が採れない。茄子は小さな株のまま、大量の花を咲かせています。こんなに一気に実をつけたら、茄子本体がダメになってしまいます。異形果も多い。

オクラも実の形状がおかしい。ちゃんと受粉が出来ていないような感じを受けます。栄養成長期に天候が悪すぎた影響なのかな?本当に、それだけなのだろうか?

野菜は僕らなどと比べ物にならないほど自然の動きに敏感だから、なんか、不安な気持ちになります。

 そんな不穏な気持ちで野良仕事をしているとオクラの花が癒してくれました。僕の知っている野菜の花のなかでは、優雅さナンバーワンです。

それもそのはずで南国の花ハイビスカスと同じ仲間なんですよね。ハイビスカスはアオイ科で、オクラはトロロアオイ科です。

植物に詳しい人はよく知っていると思いますが(僕は野菜を育てるまで知りませんでした。)、同じ科の植物は、見た目が結構違っていても咲く花の形は似ています。おなじ祖先から枝分かれしてきた名残なんですね。

 

農家の一日

 果菜類の収穫が始まって、段々と仕事が回らなくなってきました。毎年この時期は、収穫と秋冬物の播種、定植作業が重なって、バタバタの日々になります。それでも今年は不作で果菜類の収穫量が少ないから、ちょっとは楽なのですけれど(まぁ、喜ばしい事ではありませんけれどね…)

一日の流れは、夜明前に起床。軽くご飯を食べてから犬の散歩。& きゅうりとズッキーニ(成長が早くて、朝夕の収穫が必要)を収穫。ついでに畑の状態をザッと観察して、今日の仕事を決めます。

それから車に乗りとうもろこしの収穫。帰ってから選別をします。その後、前日に袋詰めしておいた野菜を出荷先別に梱包して、出荷&運送会社へ持ち込みします。

その後、朝ごはんを食べてから昼まで野良仕事。昼食+小一時間昼寝をしたら、夕方まで再びの野良仕事。陽射しが弱くなった頃を見計らって、全体の野菜収穫をします。で、家に帰って、夕御飯とか子供とお風呂&寝かせつけをしてから、野菜の袋詰めを10、11時頃までします。

こうして書き出してみるとアホの様な量の仕事をしているように感じますね。まぁ、実際、アホです。僕も給料を貰ってなら、同じ仕事は出来ないです。じぶんの意思でやっているから、なんとか乗り越えて行けます。それに、やっぱり何だかんだと言いつつも農業が楽しいのです。

恋をしてたら二人の時が過ぎるのは早いです。趣味に費やす時間は、アッ言う間に過ぎていきます。

好きだから、やっぱりやれているのです。

 

きれいだなぁ。

 茄子とピーマンの樹形がなんとなくおかしい。現状、葉っぱの色や花芽の感じなんかを観ると、そんなに悪くないと思うのだけれども、なんとなく樹形がへん。

極端過ぎた天候のせいなのかも知れない。でも、そうじゃないのかも知れない。

普段行う剪定作業の時期が、今年は入院期間中と被ってしまってアヤフヤなまんまのせいなのかも知れない。

心に引っ掛かる事、気になる事はやっておくべし❗と、ピーマンと茄子の剪定をしています。

剪定は結構難しい作業で下手を打つと余計に樹を弱らせたりします。一本、一歩 野菜と相談しつつ、要望を聞き、樹形を整えていきます。まぁ、でも、これが正解なのかは、正直わからないのですけれどね😓

りんもく舎では、田畑&生活の周辺で出る不要な有機物は、田畑に戻すことにしています。枝豆の殻とかとうもろこしの皮とか通路の雑草とか。手間はかかりますが、極力その場にあるものを循環させたいからです。

ピーマンの畝に冬の間に出たクズ豆(大豆、黒豆、花豆、いんげん豆、小豆など)をばら蒔いておきました。それらが発芽して、若芽を空に向けています。

人為的に蒔た種や定植苗に比べて、自力発芽してきた若芽の美しいこと。自分達の意思で発芽し、根を伸ばし、茎葉を茂らせる。

誰にも頼らない強さがあります。

海からの贈り物

 夜明け近くに犬の散歩に行く。草花が朝露に濡れて、うっすらと霧がかかってる。頭上は濃い青。暑くなりそうな予感。

朝靄のなか豆の畑で中耕除草しているとブヨに噛まれまくる。痛いし、痒い。やる気が一気になくなってきた。

も一度、空を見上げる。

暑くなりそう。

家に帰って子供達の朝ごはんに付き合ってから車に乗り、走り出す。

『こんな日は、海に行こう。』

やらなきゃいけない仕事は山積みだ。でも、今日はいいや。こんな日でもなけりゃ農家はやっていられない。

空が青いから仕事を休んで海に行く。それが自営業者の強味です。まぁ、結局どこかで帳尻は合わせなきゃならなくなるのですけどね。

海も好きだし、泳ぐのも好き。ただし、普通に泳ぐだけには興味ない。なんでもいい、獲物を探しながら泳ぐのが好き。

今日の晩御飯は、サザエとアワビと石牡蠣でした。磯の香りと海の味がしました。

ありがとうございました。